土ついてるよ。
高校の時に部活のマネージャーに言われた一言です。
僕は毛深いのがコンプレックスであり、今でこそこれっぽっちも気にしてませんし、全て笑いに変換する技術もついたので、ほんとにこれっぽっちも気にしてません。
もっというと、大人の人たちが別に毛深いことを「きもーい」とか言わなくなりましたよね。
学生時代の女子は遠慮なく「キぃモぉい」とか言ってくるし、男子は男子で「おまえ、ホモオダホモオか」って、いじりの対象にしてくるものです。
当時とんねるずがやっていた「ホモオダホモオ」のコントのせいで、全国の毛深い(青ひげが特徴)男子は涙を飲んでいたに違いありません。
大人になると、皆思ってても言わなくなるし、表面上の付き合いも円滑になるし、女性も別に毛深いことへのハードルも全然下がってきますよね。
さて、高校の時の部活はハーフパンツにTシャツなのでどうにも、腕と足がにょきっとでるわけです。
しかも僕はやせ形(現在は太ってますが)の色白でした。
それでいて、毛深い。
剃ったところで、すぐ生えてくるだろうし、逆に生えたての坊主みたいチクチクするなんて事態になったら、もう目も当てられないでしょう。どんなあだ名がつくか想像もできません。
そこで、考えたことは
目立たなくすればいいんだ!!
そうなると選択肢は二つ
うん。これがもっとも合理的であり、且つ当時はガングロブーム(ヤマンバとかいた時代です)
流行に乗って日焼けしようとしました。
そうしたところ思わなく伏兵が現れました。
それは「日光湿疹」です。
聞いたことあります?
日光を長時間浴びるとですね、湿疹が出るんですよ。
最初は赤いプツプツが出来て、最終的には黄色い汁が出てくるんですよ。
こりゃ、毛深いことよりコンプレックスですね。
クールポコ風に言うと
モテようと思って日焼けしようと思ったら、日光湿疹でちゃう男がいるんですよぉー
なぁにいぃー、やっちまったなぁ。
男は黙って
脱色っ!!
男は黙って
脱色っ!!
はい。
何言ってるかわからないと思いますが、そこで二つ目の作戦に出たわけです。
高校の校則には「頭髪を脱色及び染色をしてはいけない」とあるが「腕毛、すね毛を脱色及び染色してはいけない」とはないじゃないか。
秀でてる!!
これは存外!!
(べしゃり暮しに出てくる、アパートの住人関本さん)
そうなんです。校則には触れないんですね。
そこに気づいた思春期の僕はすぐに近くのドラックストアに行きました。
塗るタイプのブリーチだと皮膚まで染まってしまいそうなので、泡タイプのブリーチを購入しました。
高校の時の僕のお小遣いは月に5000円でした。その中からPHS代を2000円くらい払うので、実質的には3000円です。
運動系の部活やってるのに、一日一本ジュースも買えません。
そんな小遣いから捻出した泡タイプのブリーチで、腕毛及びすね毛の脱色開始!
泡をつけてから本来の脱色時間20分くらいでしょうか…。
少ない小遣いから捻出したんで、貧乏性でたぶん40分くらいはつけていました。
その40分間は、期待で胸がいっぱいでした。
十代の頃のコンプレックスと言うのはものすごい重みとなっており、コンプレックスを取り除けば華やかな人生になると思っていました。
その40分の僕のマインドは以下のように悪魔の変換をとげたのです。
俺がモテないのは毛深いからだ
この毛がなければ、俺はモテるかなぁ
この毛がなければ、俺はモテモテだ
この毛がなくなるんだから、俺はモるはずだ
この毛がなくなるんだから、俺はモテモテになってしまう
毛がないんだから俺は明日からモテる
明日から俺はモテてしまう!!
マイナスがゼロになるだけなのに、脳内では「これさえなければ俺は100点だ」位に変換されているです。
恐ろしいですね。10代の脳内。
この40分の間に「ごめん、俺好きな人いるんだぁ」って、本命じゃない娘にコクられるシミュレーションとかもしてました。
毛深くなくなれば、ある日突然モテだすんじゃないか?位の妄想が出来てしまうのが10代なんです。
腕毛とすね毛が見事に明るめの茶髪になりました。
そして鏡を見てみると、確かに色白の肌が黒い毛で覆われているよりは、気持ち悪さが下がったように思える。
まぁでも、きもーいからは遠ざかったわけだから、もう女子と話してもきもーいとかは思われないだろうと思っていました。
そして、次の日夏の暑い日にまた部活でハーフパンツにTシャツ姿になりました。
そこでマネージャーに言われた一言。
ねぇ、土ついてるよ。
色白の腕と足に、赤茶色の毛が生えているので、土がついてるように見えたのです。
それを聞いた男子どもは大爆笑!!
つちぃーつちぃーーー
ってな具合です。
(今考えたらそのマネージャーの言葉選びのセンスはスゲエな)
その時は数週間「つちだま」とか「土偶」って呼ばれました。
そんな、こんなでモテモテになるつもりで、待期待を膨らませていたあの40分は、ほんとに短い夢でした。
心の中では「風の谷のナウシカ」のクロトワ参謀が
「短けぇ、夢だったぜ」とつぶやいていました。
今の話は16歳くらいの時の話です。
その後は、期待に膨らんでいた胸にもきっちり胸毛が生え揃っております。
バイバイ